ホームで笑う女

おはようございます
2018年11月19日 月曜日です
寒くなりました 風邪など召しませんように。


 

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突然ですが、

竹ちゃんが亡くなった。

母の親友のひとりです。

タケちゃんと、シマちゃん、そして母の三人は共に同じ食堂のパート仲間で、
子育て世代の盛んな時、辛いこと悲しいこと、一緒に笑い飛ばして過ごした大事な友達でした。

近年は病に伏せておられ出会う事すら儘ならぬ状態ではありましたが、
近くを通る折にはいつも 「たけちゃんはどうしてるかなぁ」 と昔の元気な姿を思い出しておりました。

そんな、母から聞いた むかしのエピソードをひとつ。



 【 ホームで笑う女 】



電車は間もなく駅に着く、
空いている車内にアナウンスが流れた。

ゆっくりと速度を落として行く列車の車内では、3人の女性が降りる準備をしていた。

まばらに座っている乗客の中で、この3人以外に動く気配は無いところを見ると、
この駅で降りる乗客はこの3人だけなんだろう。

真っ先に立ちあがった1人は扉の側まで歩いて行き窓の外を眺めている。

もう1人が先に行った女性の方を見ながら網棚の荷物に手を伸ばしているが、
目当ての物に手が触れず、改めて網棚の方を見上げて
傘が3本有ることを確認すると、一歩下がって腕をまた伸ばした。

そして私は立ち上がって通路に出て、
その網棚を眺めつつも車窓の景色に目を向け
駅のホームが現れるのを待っていた。


あと少しと思っているところで列車は停止した。

何か違和感を感じながらも扉に向かって歩いていると、
扉の所にいた女性が、

 「ありゃ! あかんわここ ホームあらへん」

 「え~っ? ホンマや道理で開かんはずや」

 「ここあかんわ もっと前に移らんと、走るで!」


島ちゃんの号令で一斉に前方の車輌に向かい走り出す。

 「え~ ちょっと 」

 「早よ 早よ」

島ちゃんは早い! 既にひとつ前の車輌へと走り抜けている。


 「ちょっと アンタ!  コレ なんやさ! あかん!」

ところが、後ろに来てるはずの竹ちゃんの声は聞こえるが気配が無い。


振り返ると竹ちゃんは、傘を振り上げバタバタしている。


 「あかん! ユリさん ちょっと待っとくれい!」

なんで?


よく見ると竹ちゃんは傘を振り上げてるのでは無い、

傘を引っ張っている。

どうやら買ってきた3本の傘の肢の部分が

網棚に引っかかって外れないのでジタバタしている。


 「何してんのや 早よ 早よ」

前では島ちゃんがホームに降りて、顔だけ車内に入れて手招きしている。


 「あかんのよ  竹ちゃんがまだ」


そう言って振り返ると、
今まさに網棚から解放された傘を振りかざし、
今度は確かに振りあげて、
竹ちゃんが血相変えて走って来る!


手招きしていたシマちゃんの居る扉まで行くと、
島ちゃんはホームから足だけ電車に入れて
列車後部の車掌さんめがけてダメダメと手を横に振っていた。

手招きしていたかと思うと、手を振ったり、忙しい人だ。

でも、おかげで私たちは無事にホームに降り立つ事ができた。


ホームに降り立った3人、
お互いに顔を見合わせる、

次に竹ちゃんが持つ傘の方に目をやり、
彼女が何故あんな出先で傘を三本買ったのか?

と言う疑問が生まれると同時に急に笑いがこみ上げてきて、
三人は、

その場に座り込まんとばかりに笑い出した。


その横で、扉を閉めた列車がゆっくりと動き出した。



 たけちゃんのご冥福をお祈りいたします。

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  • 京都の友

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